地理学者が哲学に目覚めたら最強だったんじゃないか

オギュスタン・ベルク著『風土学序説』を紹介します。

11 意味の構造

11 人間の発揮する自由は生の次元からさらなる高次元へ向かう -2

自由にふるまう身体と「風土」の原則 人間が定めるルールの類は、定められた時から例外の発生や状況の変化により変化を始める。 その変化は、ルールが本来定められた目的を理解している限りで、本来の目的に沿って進行するだろう。 「何のためにルールを守ら…

10 人間の発揮する自由は生の次元からさらなる高次元へ向かう -1

人間が他人と共に環境を取り込もうとする理由 人間と物をそれぞれ方向づける意味=おもむき(それのそれらしさ、その人のその人らしさ)は、ある社会の文明(風性)の次元(本書の用語では尺度)だけで展開するのではなく、それを下支えする次元すべてを含む…

9 意味=おもむきとは何か -3

何かとして →← 何者かとして 何かを「〇として」扱う人間には、「〇」にふさわしい態度や行動が求められる。 たとえば日本のシンボルであり世界遺産たる富士山のおもむきに、ゴミは似つかわしくない。 富士山に登る人は、富士山の登山者「として」自分の出す…

8 意味=おもむきとは何か -2

人がものに意味を感じるとはそれを「○○らしくとらえる」ということではないか ベルク氏は『風土学序説』の冒頭から意味=おもむきという語を使う。 p.12 この書物が語っているのは…わたしたちの世界を生み出し、この世界についてわたしたちに語りかける言葉…

7 意味=おもむきとは何か -1

キーワードは「として」だ だいぶ脱線したが、話を地理の授業に戻そう。 ある人が物を「〇〇として」把握するとき、元来は意味などもたない物が、その人の風物身体「風土」となってある特定の意味を宿す。 物は原初の状態、すなわち人間に把握しがたい「宇宙…

6 そして風土学へ

新たな地理学が前提とする学問 = 風土学 ベルク氏がおそらく前記事のように考えると同時に提唱した新たな学問「風土学」は、諸科学の知識を地理学と和辻氏が直感的に描いた「人間存在の構造契機」に沿って組み立て直し、近代思想が解体した昔の世界観に代わ…

5 環境可能論から1歩進んだ地理学

地域住民の世界観を加味した地域性 ベルク氏は和辻哲郎『風土 人間学的考察』に触発されて、地理学の対象である「世界」や「地域」といった事物はそれが立脚するところの自然科学が対象とする事物とは異なり、地理学者自身を含め対象地域の住民その他様々な…

4 有限の宇宙という世界観

科学の限界 またもう1つ重要なのは、ベルク氏は学者という宗教家や詩人とは異なる分野の専門家として、彼らのようには「宇宙の端緒」を仕事の対象として扱うことができないことを自覚している点だ。 ベルク氏は哲学を参照することで、地理学に限らず全学問に…

3 科学の威を借りた人間

基礎研究の成果は理解されづらく忘れられやすい 一方で、世の中には文明より下の尺度(物の本質、物理的な性質や生態系のスケール)の秩序がそれより上の尺度(文明)のあり方を定めているだとか、その逆に上位の尺度が下の尺度のあり方を裏で取りしきってい…

2 地理学者の信条 -2

人文地理学の基本(2) ある物事が(その意味と共に)実現する過程 現実においてある事物に意味=おもむき(いわゆる意味)が発生する際、その事物においてその文明的な意味より下位に位置する(意味の発生を水面下で支えている)尺度は、その意味=おもむ…

1 地理学者の信条 -1

人文地理学の基本(1) 『風土学序説』でベルク氏は、数多の専門外の学説を参考にする。 それらが理にかなっているか否かを精査する際、またそれらを総合する際、ベルク氏は自分の専門分野である人文地理学の原則にもとづいて自分の意見を述べる。 そしてま…