地理学者が哲学に目覚めたら最強だった説

オギュスタン・ベルク著『風土学序説』を紹介します。

7 風土性と「風土」

13 「近代思想は是ではない」のなら、何が是なのか

「実存する」が意味すること 前記事の最後の引用に出てきた、またこれまでも何度か出てきたが、人間が「実存する」(原語に依拠して訳すと、「外に立つ」)とは実際どういう意味なのだろう。 本書に従って簡単にまとめると、人間は自分の体を拠点に直接/間…

12 体の外に出るとか物を体に取り込むとか…ヴァーチャルな世界の話かよ!

環境と自分の体のイメージは変わりました? ここまでの記事で僕が言っていることは、どうだろう? 納得できるだろうか。 突飛すぎてちょっとイメージしづらいんじゃないだろうか。 そんな、きっと読者に抱かれるだろう感想を代弁して、記事のタイトルをつけ…

11 風土性は人間性の原点である -2

人間は自分の感覚と他人の感覚(とその他の何か)の接点を探そうとする生き物である 前の記事で述べたことをまとめると、どうやら人間は自分の感受性を自身の体外まで、「わたしたちが足を踏みいれることもないような場所での事件」についてまで何かを感じら…

10 風土性は人間性の原点である -1

「風土性は人間の実存の構造契機である」とは? 前の記事で引用した、ベルク氏が和辻氏から引き継ぎ独自に発展させた風土性の定義は、以下のとおりである。 p.223 人間の身体が二つに分かれ、わたしたちの動物身体の中心の存在が、わたしたちの世界の地平の…

9 風土性とは人間特有の世界観である

風土性(メディアンス)とはなにか 前の記事では、僕が『風土学序説』から読み取ったベルク氏による人間固有の性質(仮説)の解釈を述べた。 ベルク氏はこの人間固有の性質を風土性、フランス語でmedianceと名づけた。 先に本書に沿って説明してもよかったの…

8 地理学者による人間性についての仮説 その1

地理学者による人間の定義(特徴1) ベルク氏は各方面の専門家の研究成果を総合して、ある仮説を立てた。 その仮説とは 人間とは、人間として覚醒しているときは常に、自分の認識する事物(環境)すべてを、あたかも自分と他人で共有している体であるかのよ…

7 「風土」と人間の肉体

認知科学の発展を助けた現象学 生き物の身体に感覚がそなわっているのは当たり前のことに思える。 しかし、これが言うまでもないほど当たり前であったせいか、前に挙げた西洋近代の諸思想はこの事実をないがしろにして、かつ身体は物体であるというこれまた…

6 人間は世界を体内にとり入れる

人間は①自分の体から環境へと伸びる、さらに②その環境を自分自身へと取り込もうとする 人類学者ルロワ=グーランは前述のとおり、人間の技術体系や象徴体系を「すべての器具を人間の外に押し出そうとするプロセス」と呼び、その発展を「社会的な身体」の進化…

5 人間(主体)と環境・物(客体)という世界観

文明の発生 前の記事で引用した部分でベルク氏は、歴史上の「風土」の発生プロセスは3つのプロセスの同時進行としてとらえられると言った。 p.170 わたしたちの祖先は、人間という種が霊長類から誕生するプロセスそのものにおいて、技術と象徴を発明したので…

4 人間にだけ「風土」がある理由 -2

人類学者の学説を手がかりに 人の胎児から乳幼児へかけての成長過程が人類の進化をなぞっていることは、科学的にも観察されている事実である。 ベルク氏は先の記事で述べた「具体性」を裏付けるために、フランスの人類学者アンドレ・ルロワ=グーラン(1911-…

3 人間にだけ「風土」がある理由 -1

環境と「風土」 拙ブログで「風土」について説明する際、最初に述べたことを改めて述べるが、あらゆる生物は環境に囲まれている。 生物の一種である人間にも環境がある。 しかし、人間と環境の間だけには「風土」という関係性がある。 つまり環境における諸…

2 和辻哲郎『風土 人間学的考察』と『風土学序説』

『風土学序説』の要旨は、思想家・和辻哲郎から受け継がれた p.4 存在の普遍性とその地理的な表現の独自性の〈総合〉を初めて試みた人は、有名な著書『風土 人間学的考察』(昭和十年)を著した和辻哲郎である。わたしは思想的に和辻から強い影響を受けてお…

1 ここからが拙ブログの本題である

ここまではまだ拙ブログの前説である 拙ブログにおいてこれまで僕は『風土学序説』の内容をできるだけ曲げずに、拡大解釈しないよう、かつ常識はずれな言い方をしないよう気をつけながら「風土」を紹介するよう努めてきたのだが、あなたはどう感じただろう?…